News
Yearly Archive
-
三木組奮闘記『考現学百貨店』
続きを読む: 三木組奮闘記『考現学百貨店』長い夏休みが終わって久しぶりの大学です。僕の授業は、選択科目。よって、前期と後期で学生が「ごろっ」と入れ替わります。まずは、授業方針と僕の活動をスライドで説明。その後、前期の学生達の課題への取り組み方を紹介。観察と想像からコンセプトを発見して、デザインへと繋いでいくプロセスは後期も変わりません。ただ前期とちょっと違うのは、クラス全体で作り上げるプロジェクト。個人のデザインワークを完成させると同時にクラス全体で一つのプロジェクトへと完結させていく醍醐味を学ぶ授業になっています。
さて、後期の課題は『考現学百貨店』 。聞き慣れない名称にみんなキョトンとしています。「みなさん、考現学という言葉を聞いたことがありますか?」。誰も手が上がりません。「それでは、考古学という言葉を知っている方」。大勢の手が上がります。 考古学は、人類が残した痕跡などの研究を通し、過去の人たちの暮らしや文化を知ろうとするもので、人類の活動とその変化を研究する学問です。これに対して考現学は、現代の社会現象を場所・時間を定めて組織的に調査・研究することで、いまに暮らす人々のありのままの姿を浮かび上がらせ、世相や風俗を分析・解説しようとする学問です。『考現学』は、大正時代の末期に日本で始まった学問で、建築学者だった今 和次郎(こん わじろう) が、1927年に開催した『しらべもの(考現学)展覧会』がその起源だそうです。
まず、考現学の手法を使って現代の大阪を独自の視点で観察してもらいます。学生達とのディスカッションでは、通天閣の界隈や大阪環状線の界隈などいくつかの候補が挙がりましたが、最終的には、多数決で大阪に決定。もう少し、狭いエリアの方が色濃く観察出来るかもと思いましたが、彼らの意見を尊重。続いて、その観察の方法を紹介。例えば、飲屋街の看板ばかりを観察する人、町中のマンホールばかりを観察する人、また、大阪のおばちゃんばかりを観察する人、電車の中での座り方やしぐさばかりを観察する人など、それぞれがユニークなテーマで路上観察や人間観察を進めていきます。暮らしの中から独自の視点で切り取った風景を徹底して観察することで、見ているつもりで見ていなかったモノやコトを発見していきます。30名のクラスであれば30の視点による観察記録が誕生し、そこに思いもよらなかった町の風景が立ち上がり、さらに文化や人の気質までもが浮き彫りになるかもしれません。
そして、その観察記録を手がかりに、独自のモノやコトを発想する個人のプロジェクトへとアイデアを展開してもらいます。例えば、飲屋街の看板ばかりを観察する人は、『水モノ研究所』と銘打ってオリジナルな飲料水を販売する店を作ったり、マンホールばかりを観察する人は、その多様な文様の研究から『地模様製作所』と銘打って地域に密着した文様のデザインで商品開発をはじめたり、また、大阪のおばちゃんを観察する人は、『浪速いちびり案内人』と銘打って、大阪のおばちゃんをナビゲーターとするディープな大阪情報を知らせる出版物を制作したり、電車の中での座り方やしぐさをばかりを観察する人は、『無意識・プロダクト』と銘打って人の行為や状況をコンセプトとするデザインを提案したりと考えるかもしれません。このように今回の課題では、まず大阪をテーマに暮らしを考察するために町に出かけ路上観察をはじめます。「あれっ」や「おやっ」と思うものを各自が最低でも一つのテーマで50以上の観察記録にまとめます。そして、それらを手がかりに独自のプロジェクトのアイデアを発想していきます。そのプロジェクトのネーミングや、扱うモノやコトを各自が企画・デザインして、 最終的にはそれぞれのプロジェクトを持ち寄り『考現学百貨店』という空想の百貨店を計画するのです。
想像してみてください。
30名のクラスであれば、30の視点による各50以上の観察記録で1500以上の風景が一つとなって立ち上がってくるのです。そこに30のプロジェクトによるショップが展開されます。ちょっと、楽しそうな百貨店だと思いませんか?ローカルの楽しさが際立って、ヒューマニティ溢れる暖かさが伝わってきて、知らなかった暮らしの風景にワクワクする。そんな空間でユニークなモノやコトを販売する。『考現学百貨店』。 ちょっと楽しいトキメキを感じる空間が出現するように思えるのです。課題説明後は、まず「三木組クラス全員のキャラクターを観察してみよう!」と、8コマ連続撮影のQuadCameraで彼らの表情を撮影していきます。欠席者は後日の撮影です。GIFアニメの数秒の中で即興のパフォーマンスを行います。たった数秒の中でもカメラを向けられた時の緊張と、アドリブのパフォーマンスをみんなに見られている恥ずかしさと、終わった瞬間の緩和がそれぞれの個性を浮かび上がらせます。僕も撮影してもらって三木組後期のスタートです。この映像が『考現学百貨店』の入り口に掲げられると想像すると、店主の気質が垣間みられる百貨店が出現するように思えます。人と人が対話する。そこには、なんらかのカタチでその人の個性が投影されていきます。学生達の切り取ってくる風景によって、どんな大阪が浮上するのだろうか? 乞うご期待!



























-
de sign de > talk 01 >
続きを読む: de sign de > talk 01 >来春、開設予定の中之島デザインミュージアム de sign de > (デザインで)のプレイベントとして開催されるトークショー(5回シリーズ)の1回目が9月9日(木)に行われます。第一回は、服部滋樹さんと橋本久仁彦さんの対談。テーマが「コミュニティのための場とプログラム」だとか。どんな話になるのかは当日の楽しみとして、僕がこのテーマを聞いた時に「ピン」と閃いたのは、「コミュニティという人と人がつくりだす場は、自然の摂理や生命の仕組みとよく似た形態ではないだろうか?」という仮説でした。つまり、人という動物が集まって場やプログラムを考えるのだから、淘汰や分裂や融合をしながら生成を繰り返すのではと考えたのです。もちろんそこには、秩序やルールやヴィジョンといった知恵も存在しますが、もっとプリミティブな「暮らし」の中にみる「営み」や「持続性」から導かれる「生きる」といった極めて根源的な所に根ざしているのではないだろうかと思った次第です。そこで、何億という精子が卵子とランデブーする「妊娠」に生命の根源的なコミュニティの始まりを想像したのです。母体は、いわば偶然の出会いともいえる小さな生命を育てるコミュニティの場ではないだろうか?人間における十月十日という妊娠期間は、最小のコミュニティが育まれるプログラムといえないだろうか?と、どんどん妄想が広がってきたのです。服部滋樹さんと橋本久仁彦さんの考え方がどのような話に進展するかは、まったくわかりませんが、このテーマを独自の仮説で彼らにぶつけてみることで、いわゆる情報を正確に伝えるアナウンスとしてのデザインの役目から、モデレーターやニュースキャスターやジャーナリストのような視点で問いかけるデザインのあり方を模索してみたくなったのです。
この de sign de > talk は、講演者が一方的に話し、オーディエンスが聞き役にまわるようないわゆるトークショーではないカタチが望ましいと思っています。僕は、コミュニケーションのデザイナーとして多くのデザインの生成に立ち会ってきました。勝手な思い込みかもしれませんがコミュニティの形成と自然の摂理や生命の仕組みに因果関係があるのではと思えてならないのです。その辺りをスピーカーに尋ねてみたいという想いが、このポスターの制作意図です。みなさん、ぜひ、服部滋樹さんと橋本久仁彦さんのトークショーに参加してみてください。僕もオーディエンスの枠を超えて参加できればと思っています。ちょっとドキドキしてきました。みなさんの声でつくる de sign de > talk 。まもなく、はじまり、はじまり。
de sign de > talk 01 >
第1回「コミュニティーのための場とプログラム」
話し手:橋本久仁彦(プレイバックシアタープロデュース代表)X 服部滋樹(クリエイティブディレクター・デザイナー)
開催日時:2010年9月9日(木曜)/開始19:00 – 20:30終了予定(受付18:30 会場入口にて)
参 加 費 :¥1,000(1ドリンク付)
定 員:60名(椅子席は先着順/立見あり)予約不要
○ 終了後にコミュニケーションパーティあり(参加自由・ドリンク有料)
会 場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST www.designde.jp
主 催:中之島デザインミュージアム de sign de >
問合せ先:中之島デザインミュージアム de sign de > 事務局 (担当:大野)
〒542-0082 大阪市中央区島之内1-19-15 高吉堺筋ビル9F(有限会社イン内)
Tel. 06-6243-4330 E-mail : info@designde.jpde sign de > talk とは:中之島デザインミュージアム de sign de > のオープン先行イベントの一環で、de sign de > コミッティメンバーによるリレートークです。2011年春のグランドオープンを前に、de sign de > が目指す活動の輪郭を対談形式のトークセッションで伝えていこうとする試みです。
-
洛東楽々、日々是好日。
続きを読む: 洛東楽々、日々是好日。僕が長くブランディングのお手伝いをしている洋菓子店の『マールブランシュ』が、清水寺の参道にあたる清水坂に新店舗をオープンしました。「観光」で賑わう京都の中でもひときわ世界から注目をされるエリア。京都を訪れる世界中の人が「ワクワクする。いつも素敵な街ね」と思っていただけるような、輝く京都の一助となれるような洋菓子店をめざそうと計画をしてずいぶん議論を重ねてきました。お店のコンセプトは、ずばり「観光」。折しも、国をあげて観光に力を注ぎ「輝きのある日本」を打ち出そうとしています。新たな京都の「光」を「観」るような「新しい京都のお土産に出会えるお店」を目指します。語れるモノづくりをベースに、この地域のポテンシャルを存分に生かした、ここでしか出会えない商品群でお客さまを待ち受けます。ドキドキします。ハラハラします。観光客にどんな反応が出るのだろう。外国人にどう映るんだろう。いつもの商品開発とはちょっと違います。
8月10日、小雨まじりの午前9時、門が開けられます。なんだか、通信簿をいただくような緊張感が社長はじめスタッフのみんなに広がります。「ようこそ、マールブランシュへ」。お客さまが吸い込まれるように入ってきます。みんな興味津々の様子で店内をじろじろと観ています。ひとつ、ふたつと商品がカゴに入れられていきます。若い女性が「可愛い〜」と、商品を手に取ります。どんどんと商品がカゴに運ばれていきます。店内では、日本語はもちろんのこと、英語、中国語が飛び交っています。すごいことになってきました。長〜い、うなぎの寝床のような店舗にお客さまが一杯。海外のみなさんもお気に召したご様子。なんか、さっきまでの緊張が嘘のよう。新店舗のオープンに何度も立ち会ってきましたが、こんなに国際色豊かな人達で混雑する風景を見るのは初めて。思わず「ウェルカム」といいそうになります。京都・新土産物開発。空間は、インテリアデザイナーの辻村久信さん。
清水さんへのお参りの際に、ぜひ、足を運んでみてください。「茶の助」・「菓の奴」と名づけた可愛いキャラクターが店内でみなさんをお待ちしています。遊び心に粋な振る舞い。京の見立てがもてなす文化。
土を耕し、水に潤い、光り輝き、風に舞う。五穀豊穣、旬の歓び。
いにしえの音羽の山の清水に、こころ潤い、からだ舞う。
丁寧に、繊細に、丹精込めた、菓子づくり。喜ぶ笑顔に技磨く。
日を楽しみ、風を楽しみ、雨を楽しむ。洛東楽々、日々是好日。

-
de sign de >
続きを読む: de sign de >水都大阪の堂島大橋から玉江橋までの全長400mの親水空間『中之島BANKS(バンクス)』に、2011年春、デザインミュージアムが開館します。
服部滋樹さん、間宮吉彦さん、ムラタ・チアキさん、柳原照弘さんといったデザイナーの方々と松原眞由美さん、大野裕子さんといったキュレーターの方々と一緒にコミッティメンバーを務めさせていただくことになりました。そして、そのデザインミュージアムのネーミングとロゴマークを僕が担当させていただくことになったのです。
このミュージアム、ちょっと変わった名称で「de sign de > ( デザインで)」といいます。de sign de > は「デザイン=design」に日本語の格助詞「で=de」を組み合わせた造語で「デザインで、はじまる」や「デザインで、つながる」といった、デザインで起る事象や行為を想起させるような新しい言葉です。de sign de > には、行動や運動を指し示す強い意志が込められています。また、de sign de に加えられた記号「 > 」は、「次へ…」を表すもので、デザインで、人や暮らしに「喜びをリレー」していく指針を示しています。
よって、「人を、暮らしを、街を、デザインでときめかす」de sign de > の理念を素直に「言葉」で伝えるデザインに置き換えれないものかと考えました。また、参加する多くの方の考えを柔軟に受け止めれるプラットフォームのようなデザインができないものかとも考えました。
結果、de sign de > とすることで、どなたの思いもこの「デザインで…」の言葉の後につなげることができると思ったのです。つまり、「理念の声」を可視化しようと考えたのです。ちょっと、ユニークな発想だと思いませんか? 象徴としてのシンボルマークの概念とは違う、参加する人の思いを柔軟に受け入れるロゴマークなんです。僕は、これを「プラットフォーム ロゴマーク」という概念で呼んでみようかと思ったりしています。
さて、de sign de > の活動は、次の4つ。
1 : 都市の魅力をデザインで掘り起こし、ローカルブランディングについてさまざまな提案をすること。2 : クリエイティブな人材をデザインで育て、つくる人、依頼する人、選ぶ人の美意識を目覚めさせること。3 : 語れるモノづくりをデザインで可視化し、社会にその価値を環流させること。4 : 気づきをデザインで提示する展覧会やセミナーを開催すること。
また、その活動を厳しく見守る de sign de > のコミッティを結成し、理念を遂行する原動力となること。そして、de sign de > の活動を世界に問うこと。de sign de > が目指すのは「喜びをデザインでリレーする」ことです。そして、そのバトンを受け取ったあなたが、次の誰かにその喜びを伝えたくなるような活動を進めることです。デザインで、はじまる。 デザインで、つどう。 デザインで、ときめく。そんな、de sign de > になればいいなと思うコミッティメンバーが集まって「デザインで 」どんなことができるだろうか。「デザインで 」こんなことがしてみたい。と、いったパネルディスカッションをすることになりました。あわせて、中之島BANKS前に開港する船着場のセレモニーが大阪府により行われるそうで、小河大阪府副知事も来られるとのことです。
「なんか、デザインで楽しいことしたいな」と思われているみなさん。一緒にデザインについて語りませんか。「デザインの小さな苗木をていねいに植えていって、気づいたら水都大阪に『デザインの森』が出来ているような、そんなミュージアムになったら素敵だろうな」。なんて、僕は考えています。あなたの考える「デザインで…」をお聞かせください。みんなと一緒に作る de sign de > のディスカッションにご参加ください。お待ちしています。
●
日時:2010年8月6日(金)17:00より
会場:中之島BANKS (大阪市北区中之島5-3-36 中之島BANKS EAST棟及び船着場 )
17:00-17:20
小河大阪府副知事と de sign de> ミュージアムメンバーによる水都アピール(船着場)
17:30-18:00
中之島デザインミュージアム de sign de> 設立構想 記者発表(中之島バンクス・EAST 棟)
18:00-19:00
de sign de> コミッティメンバーによる記念トークイベント(中之島バンクス・EAST 棟)
19:00~ 21:00
レセプションパーティ(中之島バンクス・EAST 棟)
[夕刻-21:00にかけて、船着場で1日限りのビアテラスが登場します。(有料)]
●
de sign de> コミッティメンバーによる記念トークイベント
パネリスト:服部滋樹(クリエイティブディレクター・デザイナー)・三木健(グラフィックデザイナー)・ムラタ・チアキ(プロダクトデザイナー)・柳原照弘(プロダクト・空間デザイナー)・モデレーター:間宮吉彦(空間デザイナー)
※ お席の数に限りがございますので、予約優先とさせていただきます。
お申込は、下記のお問い合わせへ。
お問合せ先:(株)バンクス中之島デザインミュージアム de sign de >
事務局(担当:大野裕子) Tel:06-6245-4330 Fax:06-6245-4332(有)イン内

-
三木組奮闘記 前期「卒業式」
続きを読む: 三木組奮闘記 前期「卒業式」前回の三木組奮闘記を読まれた他校の大学の先生方から学生達の課題に対する取り組み方とその完成度に「すごい!」と感心のご連絡をいただきました。学生諸君、「自信を持ってください。芸大に入って2年と数ヶ月。プロのデザイナー達からもみなさんの活動に感心の声が寄せられています」。いわゆるポスターやパッケージといった媒体が設定されている訳でもなく、ブランディングやサイン計画といったフレームがあるわけでもない。課題に対して、とことん考えて、考え尽くしたと思っても、さらに考えてコンセプトを見つけ出す。観察と想像を繰り返し、コミュニケーションを起点に新しい価値を創造する。手法や媒体計画もコンセプトに合わせ全て自由。考え方を考えて、つくり方をつくる。既成のフレームに束縛されない。気づきに気づけば勝手に発想がジャンプする。そんなことを言い続けてきた15週。
学生達は本当に身を粉にして努力してきたと思います。最初のうちは、既成のフレームを取り外されて戸惑ったことだと思います。いや、いまでも戸惑っているかもしれません。ただ、15週前よりも僕の目には、確実に考え方に対するスタンスが変わってきたように思えます。「いいえ、変わっていません」なんて人もいるかもしれませんが、時間が経つとじんわりと創造のボディブローが効いてくるはず。クリエイティブの楽しさは、テーマをしっかり見つめ、相手の喜ぶ顔を想像して発想がジャンプをした時に発見する「気づき」から始まるのです。そして、その気づきに共感した相手がさらに次の方へと、その「気づき」が多くの方に伝わり、その発想が支持された時の嬉しさがたまらないのです。
さて、学生達の最終プレゼンテーション。前回のOさんグループに一歩も引けを取らない企画が目白押し。そのいくつかをご紹介します。

まずは、八尾にある「山本団地」の再生プロジェクトを通じて「人と人のつながり」を考えるグループ Kさん、Gさん、Dさんの登場です。「観光」というテーマの最も重要な「地域資源」を輝かせるために「持続可能な社会の運用」といった視点から人を輝かせ、人が集うコミュニティーをつくる発想です。団地を「談知 」と読み替えることでコミュニケーションと知恵が集う「人to人 MUSEUM」を展開するというのです。つまり現存する団地を再生させながら、コミュニケーション環境をより快適で親密な状況へとつくり出そうとしているのです。「観光」を広義に捉えたなかなか奥行きのある発想です。昨今、地域主権や地域経営といった「権限」や「経済」の重要性を叫ぶ地方自治体を多く見受けますが、それらを動かす人と人の関係性をもう一度深く築く「地域交流」とでもいうか「つながり」に注目してきたのです。なかなか深い所に根ざしています。ここにご紹介するツールは、団地再生に対してのコンセプトから具現策までを可視化させようとしています。全てのツールが団地型のBOXに納められ、このプロジェクトの考えを自由に運ぶことのできるインフォメーション・アーキテクチャーへと仕立ているのです。
「すごいでしょ!」。
B倍のポスターをご覧ください。全てのツールを芝に広げて楽しそうなポーズを取る3人の女性。彼女達がこの企画の発案者です。なんだかワクワクするようなプロジェクトがいまにも始まりそうだと思いませんか。考え方、楽しさ、表現力、申し分ありません。いやはや、すごい力の入りようです。その力が苦しそうじゃないんです。このプロジェクトに取りかかった当初の彼女たちの必死な顔つきが、どこ吹く風といった生き生きした作品になっています。
「必死」から「必生」へ。このプロジェクトに参加することで「トキメキ」に出会えそう、そんな生きる力をもらえそうな仕上りです。ちなみに「必生」なんて言葉ありません。僕の造語ですが「必死」の「死」が感じられる悲愴なデザインは、それを受け取る方がつらいのです。よってその苦しさをみじんも見せないことが大切なの…。でも頑張りすぎると、どこかに「死」が漂うの。彼女達の仕事には、それが全くない。
すごいなー、君たち。ほんと、すごい。感動超えて、恐怖になってきました。いつの日か、彼女達とプレゼン競合するかもしれないなんて想像すると「ぞーっ」としちゃいます。
続いて、「観光」のメッカ清水寺の参道に和菓子屋をつくるという、「観光」ど真ん中のアイデアで戦いを挑んできたグループです。清水寺を抱く「音羽山」、「音羽の滝」といった名前をよりどころに「音」を全面に押し出したコンセプトを作り上げてきました。『「五感」を全て使って「音」を感じること、そこに京の「四季」を重ねる』という、独自の理念を打ち出してきました。ネーミングは、「音々庵(ねねあん)」。その音の響きと「清水(きよみず)」の音のリズムが同じであることを発見したYさん。「音々庵」の発音の跳ねる音のカタチをイメージしてシンボルマーク作ってきました。ネーミングは理念の声。デザインは理念の顔。と口を酸っぱくして伝えてきましたが見事に具現化してきました。
さて、普通ならここでアプリケーションに展開して終わるところ。彼女達がすごいのは、清水寺のポイントとなるエリアをヒントに食感を意識した和菓子を開発するというのです。例えば、仁王門は「ふんわり、ずっしり」のイメージ。よって、中モッチリ、外しっとりの二つの食感の薄皮まんじゅうを提案してきました。あんこは、なめらかだけどずっしりとした重量感で仁王門のイメージだとか。清水本堂は「ぱきっ、ざくざく」。「ぱきっ」と響く歯ごたえのある食感は、清水本堂の床板を踏みしめた時に感じる音のイメージ。堅焼き煎餅で、その「ぱきっ」と感を表現して、中はホワイトチョコレートのソフトな食感を挟むとか。音羽の滝は「ぷるぷる、ぱちぱち」。さっぱりした清涼感のひんやりゼリーを設計。「ぱちぱち」は口で弾けるソーダの粒で不思議な食感だとか。すごいことになってきました。清水寺の5つのエリアのイメージを音から発想して商品へとつないでいます。授業中に「ブランディングを人に比喩するならば、心づくり(Mind Identity)・顔づくり(Visual Identity)・体づくり(Behavior Identity)の3つがあって、どれがかけてもブランディングにならない。とりわけデザイナーは、顔づくりに注力するが、しっかりとした心づくりと体づくりがないとだめ。ここでは、明解なコンセプトの商品開発が命」と話しましたが、ここまで音で貫いてくるとは、すごすぎる。なんという吸収力とジャンプ力なんだろう。プロのデザイナーぼやぼやしてる場合じゃありませんぞ。
「女子に負けてばかりはいられない」と、啖呵を切ったK君とI君。JR大阪環状線の各駅の魅力を再発見して観光につなげると意気込んできました。女子軍団が最前線に椅子を並べて彼らのプレゼンテーションを見守ります。いつになく緊張している様子です。おっと、シャツを脱ぎ捨てピンクとイエローのお揃いのTシャツ姿になってプレゼンが始まりました。
「大阪るーぱす」プロジェクト。夏休みのこども向けキャンペーンで大阪環状線の魅力を子ども達に伝えるとのこと。環状線19駅に降り立って取材敢行。それぞれの街の魅力をI君のイラストで綴る楽しい企画です。彼らのお揃いのTシャツは、新今宮駅限定のオリジナルTシャツだとか。自分たちでシルク印刷をして気合い十分。19の駅、それぞれにオリジナルキャラクターを提案してきました。各駅に用意されたキャラクター入りピースを全て集めると、記念の写真入れになるというプレミアムグッズが子ども達の収集癖に火をつけそう。徐々にいつもの調子が出てきました。「大阪のおばちゃん」をテーマに「観光」の課題を作ろうとしていた彼らが悩んだあげく数週前に突如方針変更。「大阪環状線」で仕切り直すとのこと。「おいおい。間に合うのか?」と僕の心配をよそに、よくぞここまで仕上げてきました。「やる時はやるんだ」とでもいいそうな自慢げな顔にクラスメートの女子から拍手がわき上がりました。君たちの力は、こんなもんじゃない。もっとやれるはず。環状線だけにこの課題は、延々に終わらない。
続く男子チーム、女子のするどい眼差しに少し緊張の色が隠せません。先週まで悩みに悩み、コンセプトが決まらないまま見切り発車をしては僕にブレーキをかけられ、七転八倒していたグループ Y君、M君、I君、U君の登場です。僕の授業に真面目に参加して強い志を抱くも意気込みが優先し過ぎてコンセプトがなかなか定着しません。あまりに心配で、僕の方から2回ほど進捗状況を聞くメールを送るも、途中経過がいまいち見えてきません。論理建てて考えることになれておらず、時間経過に慌てヴィジュアルを急ぐものだから膨大な試作をボツにしてきました。彼らほどコンセプトの重要性について話したグループはいません。苦しみ抜いたことと思います。プレゼン最終日まで、僕にもどんなアウトプットが出てくるのかわかりません。「頑張れ〜」と、心で叫びながら彼らのプレゼンを観ます。奈良と書をコンセプトに鹿の絵を老若男女に描いてもらうワークショップを開催するとのことで奈良観光に集客性を与えると同時に奈良ブランディングのきっかけを作ろうとしているようです。奈良と書と鹿。わかりやすいアイコンです。「わかりやすさの設計」「地域らしさの設計」「活気や活力を与える設計」を意識した地域ブランディングの入り口を指し示すかのようなワークショップです。「モノだけではなくコトをデザインする」。これも授業で口が酸っぱくなるほど伝えたことです。墨と筆の貸し出しの仕組み。参加者に描いてもらった絵を使ってモニュメントを作る発想。プリミティブな鹿の表現による告知ツールの計画など、なんとか、ここまで仕上げてきました。鹿の絵を繰り返したり、思い切ったトリミングで告知ツールに物語性を与えようともしています。センスの良さで上手く展開してきましたが、みんなの力はこんなものではありません。というか、ここからが考え方の始まりなのです。必死のその先にある達成感。達成感のその先に漲る自信と余裕。そこに達するまでにもう一歩というところ。「鹿」づくしの告知ツール。どこかに「馬」一匹ぐらい、こっそり仕掛ける余裕が欲しいな。とことん考えた後は、緊張を緩和する「馬鹿」な発想。ユーモアは、コミュニケーションをとどける「魔法の薬」。サヴィニャックが残した偉大な言葉。そこには、自信と余裕が必要なんです。君たちの真剣な眼差しの中に「馬」と「鹿」を受け止める余裕。これが人生。これぞ、デザインの極意。

三木組の最終プレゼンターの登場です。学校で見かけたのに教室にいない。みんなのプレゼンが終わろうとしているのに、駆け込みプレゼンです。ぎりぎり「セーフ」。3人のYさんとMさんの4人組。大和郡山という地方都市にスパリゾートを計画。その集客で観光を促そうと考えてきました。彼女達もコンセプトのつまづきで苦悩したグループです。始めは、その辺に転がっている「◯◯の湯」を模倣したようなアイデアだったのですが、「カタチから入るのではなくコンセプトをしっかり組み立てる」そのために「スパを体験した時のリゾート感とは?」といった質問からのスタートです。「心と体の関係について」「自分が最もピュアな状態になるとは?」などなど議論の仕方を彼女達に伝えます。彼女達の顔が苦悩に満ちていきます。考え方の入り口を指し示したつもりですが、コンセプトの見えない不安にどこから手をつけてよいのかわからないようです。それでも繰り返しミーティングを重ねると、アイデアがぽつぽつと出始めてきます。そのアイデアをみんなで共有しながら温めていきます。彼女達曰く「うるる」な気分が味わえる施設にしたい。スパでココロもカラダも「潤う」。よって「URURU=うるる」がネーミング。名前が決まった瞬間「感じるとは?」と自問自答する人が現れます。そこから一気に「食は?、音は?、香りは?、観るは?、触れるは?」と「五感」をテーマにしたアイデアがどんどん湧き出てきます。こうなってきたらとまりません。彼女達は、自宅に帰ってからもスカイプを使って議論を重ね、机一杯、いや、溢れ出すほどのグッズをデザインしてきました。気づきに気づく。すごいパワーです。4月から始まった三木組。彼らのエネルギーは、火がつくと押さえきれないぐらいの勢いになっていきます。

おっと、授業終了後「やり直してきてたんですけど、みんなのパワーに圧倒されてプレゼン出せませんでした」と、恥ずかしそうに僕の所に作品を持ってきたNさんとTさん。二人の出身地、青森県のお米と和歌山県の紀州の梅を前面に押し出した「おむすび屋さん」のヴィジュアル・アイデンティティで食文化を通じて2つの県の魅力を発信して観光に結びつけたいとのこと。土から考える。水から考えるで、スローフードの思想で展開するらしい。恥ずかしがることは、まったくありません。ボリュームよりも質が重要。米と梅のロゴマークの完成度がとてもいいです。クラス全員を呼び戻して、再度プレゼン。「かわいい」。「おいしそう」。クラスのみんなから正直な声が上がります。NさんとTさんの興奮した顔が「プレゼンしてよかった」と、いっているようです。これで、本日の授業終了。
机の上にみんなの作品を並べ「プチ展覧会」。教室内の机に収まりきりません。1グループ5台ぐらいの机にぎゅっと凝縮して並べていくと、コンセプトのエキスが際立ちそれぞれの個性が明解になってきます。みんなが一斉に写真を撮り始めました。刺激が刺激を呼んで「もっと、がんばるぞー」がこだましています。ここで紹介できなかった作品もすごいつわものぞろい。いやはや、えらいことになってきました。みんなと別れるの「寂しいよ〜」。
やる気、その気、本気。学生諸君「がんばったね!」。そして「ありがとう!」。
三木組奮闘記、前期卒業。みんな「おめでとう!」。